PARCO MUSEUM

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大宮エリーのコメント

最近、雑誌でこういう依頼が重なりました。
「人に何かを伝えるということが怖かったり苦手意識に苦しんでいる人が多いので、
その方にコミュニケーションのしかたを教えてください」

驚きました。
こんなに今、コミュニケーションに悩んでるなんて。


私だって、伝えられなくて、もどかしくて、臆病で、嫌になって、そんな経験があるから思うんですが、
伝えないと、ゼロになっちゃうと思うのです。
言わないと、なかったことになっちゃう。
ありがとう、ってすごく思っていても、それを伝えようとすることから逃げると、
私のありがとうという気持ちが、存在しない事になっちゃう。
そう思うと、そちらのほうが恐ろしくて、だから、勇気をだして伝えるのです。
たとえ、伝わらなくても。伝えようという努力をするというか。
だから、上手く伝えようとしない、ってことだと思うのです。
ありがとうをうまく伝えるにはどうしたら、と考えるから自信がなくなるわけで、
シンプルに、ありがとうをたくさん言う方が伝わるんじゃないかな、と思うんです。

ありがとうを、10回。
それでいい。


そういうことを、展覧会で表現できないかなと思いました。

思いを伝えるということが、どういうことなのか、
そのイメージ、感覚を味わってもらい、楽しんでもらい、今一度体験してもらう。
思いを伝えるということがどんなに心細く、時として勇気がいることであっても、
そのことの高揚感、伝わったときの達成感、伝えようとする行為の生き生きとした躍動感、
感動、伝わったときの言いようの無い切なく、奇跡的な感じを思い出してもらえれば、
きっと、この展覧会をあとにしたとき、そのひとは大切なひとに電話したくなったり、ご無沙汰してしまっているひとにお手紙を書きたくなる。

そんなふうに、なったらいいなと、思っています。