若い女性を中心にジワジワと人気上昇中の“おやじフィギュア”をモチーフに作られたのが、映画『ヅラ刑事』のポスターフィギュアだ。映画公開を記念して9月1日からロゴスギャラリーで開催される『ヅラ展〜デハラユキノリのおやじフィギュア達〜』の製作者であるフィギュア作家・デハラユキノリさんに、ヅラ展の見所やフィギュアに対する思いを語っていただいた。
Q.フィギュアを作られたきっかけは?
学生の時から絵を描いていましたが、一方で紙粘土を使った立体作品も以前から作っていました。デザイナーとして会社勤めをしていたのですが、違和感を感じていて…。辞めて東京に出てきて、本格的にフィギュアを作るようになりました。会社のストレスから立体に向かったのかも(笑)。
Q.なぜ紙粘土を選ばれたのですか?
紙粘土はイイんですよ。すぐ乾くし。軽いし。水に浮くくらい軽いのを使っています。粘土って形を作るのに時間をかけられないんです。1時間が勝負です。思いついてパッと作ってすぐに形にできる、これが紙粘土のいいところですね。軽いので撮影の時も楽ですよ、壁にペタッと貼ることもできるし、倒れても折れたり割れたりすることもほとんどないですから。
Q.『ヅラ刑事』のフィギュアを作るきっかけは?
映画のプロデューサーとお会いする機会がありまして、僕は前から映画の仕事をしたい、と思っていたんです。なので、プロデューサーに「何かないですか?」と聞いたら「『ヅラ刑事』というものがあるからやったら」って。その時は『ヅラ刑事』って何だ? と思ったし、映画の内容を聞いても「これは実現しそうにないなぁ…」なんて思っていたけど、撮影が始まったと聞いてビックリしました。
その後、製作の話をきちんといただき、キャストの写真や資料をもらったのですが、ストーリーがよくわかってなくて、「パルコで上映するものだからオシャレに作ってよ!」というオーダーのみ。僕は原宿で何度か個展を開いていたので客層はそんな感じかな、と自分で推測して、じゃあ自分の作品のタッチで作ってみよう、と思いました。それから河崎実監督と偶然お会いする機会があったので「どういう風にしましょう」と聞いたのですが、「好きにやっていいよ」と言われて。それならと思い、自分の世界に近い作品に仕上げました。
ヅラ刑事&デブ刑事
黒モーリン
ハリちゃん
メンタ君(レモン&ピンク)
ヤマモトサトシ
リストラ最前線で戦う中年サラリーマン。ギャバクラ大好き。小心者で意地っぱり、恥ずかしがり屋で泣き虫。
左から
プチトマトちゃん・ミニキャベツ・キラートマト
Q.『ヅラ展』の見所は?
今回の展覧会は、ヅラ刑事の撮影用に使ったフィギュアの展示や映画関連グッズの販売等もあるのですが、それはあくまでもヅラ刑事のブースです。それとは別に“ヅラ”というテーマで作品を展示しようと思っています。オジサンのフィギュアばかり30〜40点ほどかな。作品はすべて1点物です!
Q.これまで製作されたフィギュアの中で、一番のお気に入りは?
う〜ん…やっぱりサトシ君かな。僕が世に出るきっかけとなった作品だし、何より稼ぎ頭なんですよ、サトシ君は(笑)。いろんな広告や雑誌の表紙に使っていただいて、オジサンの代表みたいな感じになっています。それで仕事を持って来てくれるんです(笑)。
Q.デハラさんにとって“フィギュア”とは?
フィギュアは“遊び”ですね。大人になっても続けられる遊び。こんなに楽しいと遊びすぎて仕事にならないと思っていたのですが…僕はただ人形を作って遊んでいるんです(笑)。
Q.製作をやめたいと思われたことは?
いや、ないですね。しんどくないので。作るものが思い浮かばない、ということもないし、逆にやめたら困ります! もう会社には戻れないので(笑)
Q.今後、どんなことをやってみたいですか?
今、小説を書いています。11月頃には完成させる予定です。イラストやフィギュア、文章と色々なことをやるのは楽しいですね。クレイアニメほどしっかりしたものではないのですが、いつか作品を映像にしてみたいとは思います。
デハラユキノリ
1974年高知県生まれ。
ナイキやタワーレコードなどの広告や装丁を手がける一方、年間4〜6回のペースで個展を行う。これまで東京を中心に、香港、NYでも作品を発表している。