会 場: LOGOS GALLERY ロゴスギャラリー
渋谷パルコ パート1 / B1
期 間:

2011年4月14日(木)−2011年4月26日(火)

※会期中無休

10:00 - 21:00pm

※最終日は17:00にて終了

入場料: 無料
お問合せ: 03-3496-1287(ロゴスギャラリー)

展示会内容

時を超え、響きあう三冊の日記とその日付―
一冊は、アンネ・フランクが、オランダのアムステルダムで《隠れ家》の日々を書き記した日記。もう一冊は、アンネとおなじ年に生まれた作家小林エリカの実父が、日本の金沢で学徒動員・敗戦・戦後の日々を書き記した日記。
そしてアンネの足取りを死から生誕へ遡るようにしてヨーロッパを旅し、作家自身も日記を書いた。
アンネは日記を「キティー」と名づけ、日記はいつも心の友「親愛なるキティー」へ宛てた手紙のように綴られた。

リトルモアから刊行される小林エリカ著「親愛なるキティーたちへ」。
作家でありイラストレーターでもある小林エリカが、時を超え、響きあう三冊の日記をモチーフに制作した本の出版記念展。
過去、戦争という大きな局面を乗り越えてきたその日々が、今、震災という難局に直面している私たちに何かを気づかせてくれるはずです。

今回の企画展を開催するにあたり、作家自身からのコメントがございます。

4月14日から渋谷ロゴスギャラリーにて「親愛なるキティーたちへ」展がはじまります。

 4月14日。ちょうどいまから2年前のそのおなじ日、私はチューリップと水仙と桜の花が庭に咲くアンネ・フランクの生まれた家へと辿り着き、旅を終えようとしていました。  私は二冊の日記たちを抱え、旅をしていました。
 ひとつは、アンネ・フランクが、かつて13歳から15歳、オランダのアムステルダムで、《隠れ家》の日々を書き記した日記。
 もうひとつは、アンネとおなじ年に生まれた私の父が、かつて16歳から17歳、日本の金沢で学徒動員・敗戦、そして戦後の日々を書き記した日記。

 私はアンネ・フランクの足取りを死から生へ向かって遡るようにして旅をしながら、そのおなじ日に、それぞれの時間と場所の中で書かれた日記たちを読み、私自身も日記を書き記しました。

 アンネ・フランクは日記を「キティー」と名づけ、日記はいつも心の友「親愛なるキティー」へ宛てた手紙のような格好で綴られました。
 なぜなら、書くことによって、新たにすべてを把握しなおすことができるからです。
わたしの想念、わたしの理想、わたしの夢、ことごとくを。

 又一日、命が延びた。と日記に綴った、私の父。
 そして、私自身も、それぞれの日記「親愛なるキティー」たちへと向かいあいます。
親愛なる私の父へ。
親愛なるアンネ・フランク、その年の6月、80歳の誕生日を迎えたかもしれなかった、彼女へ。
親愛なるキティーたちへ。

ベルゲン・ベルゼン - (ベルリン) - アウシュビッツ/アウシュビッツ・ビルケナウ - (ベルリン、ふたたび) - ベステルボルク - アムステルダム - フランクフルト・アム・マイン。

 展示は、そのときのことをまとめた「親愛なるキティーたちへ」というリトルモアから刊行される本にあわせて、予定していました。
 けれど、3月11日におきた地震のため、紙が不足していることや印刷所の影響などで、本がまだできていません。いま、そんな状況の中でも、印刷所の方たちはじめ本に関わる人たちが、本を作ってくださっています。4月26日のクロージングまでに本は間に合うかもしれないし、間に合わないかもしれません。いずれにしても、どうか、本ができた時にはお手に取っていただけたら嬉しいです。

 いまだに、それぞれが悲しみや不安の中にありますが、それでも私はできる範囲でできるかぎり本を作り続け、展示をしてゆきたいと考えています。どうかご理解とご支援をいただけたら幸いです。

 地震や津波、原子力発電所のニュースを一心に聞いています。死者・行方不明者は2万7979人。避難所で暮らす人は17万2415人。
 私はいま小さくした電気の光のもとで、アンネの日記と、私の父の日記を、読み返しています。
 あまりにも巨大な数や力を前に、それでも、そこにはひとりが生きていること、そして、そこにはそのひとりのささやかで壮大な人生があるのだということを、私は思い知ります。
 一日一日の今日があって、そして、今があります。

 愛する人や大切なものを失ってしまった人、それぞれの悲しみや苦しみの中にある人の心が、どうか支えられるように強く願います。 
  たとえどんな状況の中にあろうとも、「親愛なるキティー」はいつでもあなたの心のうちを受け止める準備ができているはずです。

2011年3月31日
東京にて
小林エリカ

小林エリカ

1978年東京生まれ。作家。
ファッション誌・新聞・広告等でイラストも手がける。
2003年カナダバンフセンターにアーティスト・イン・レジデンス(国際交流基金)。
2006年エストニアEAA、フランスCAMACにアーティスト・イン・レジデンス(野村国際文化財団)。
2007-8年アジアン・カルチュラル・カウンシルの招聘でアメリカ、ニューヨークに滞在。
現在、東京在住。
2010年春よりkvinaメンバーと共に英語・日本語・エスペラント語三ヶ国語のセルフ・パブリッシング・シリーズLIBRO de KVINAをたちあげる。
著書は小説に「空爆の日に会いましょう」コミックは詩をモチーフにした「終わりとはじまり」(共にマガジンハウス)「 この気持ちいったい何語だったらつうじるの?」(理論社YA新書よりみちパン!セ)などがある。