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遊牧民にとって一番の楽しみである食事の際に使われる「ナンソフレ」と「ダイニングソフレ(食卓布)」、そして家畜をコントロールするのに必要な岩塩を保管する「塩入れ袋」を集めた展示会です。 |
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アフシャール族やバルーチ族などイランを含めた周辺地域の遊牧民族が、織り、食習慣・生活の中で使われた毛織物―――。焼きたてのナンを包むナンソフレや、食卓のように食べ物を載せるダイニングソフレ、そして、生きていくための大切な塩を護るユニークな形態を持つ塩入れ袋などを展示即売いたします。どの様に使用されるのか、またどんな部族が創るのか。写真なども展示し、西・中央アジアの草原や砂漠地帯を、遊牧という基層文化を保ちながら生きてきた人々の手仕事を中心とした生活文化の紹介をいたします。 |
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遊牧民【ノマド】とは、自然環境にたいしてとても柔軟に生きている人々です。 |
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例えば、寒くなれば暖かい場所に自ら移動し、暑くなれば涼しい所に移動するという風のように生き方をする人々です。
一生のほとんどを野外で生活するわけですから、自然に敏感でなくては生きていけません。飼っている家畜の草を求めて、夏は標高の高い高原地帯を遊牧し、冬には低地に移ります。 |
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そのために常に移動を考えた道具を持つ必要があります。純粋な遊牧民は、家を持つ事もありません。その代わりに彼らは多くの毛織物を織ってきました。
移動に便利なテントが住居となりますが、テントの中の床、壁、天井などは折畳むと小さくなる絨毯やキリムが使われます。テント内ではクッションや枕になり移動時には荷物を入れる袋物、紐、掛け布になる毛織物です。素材は自分達で飼っている羊・山羊・ラクダの毛です。 |
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西・中央アジアの遊牧民は、このような自然環境に適応した循環型のライフスタイルを、1万年に及ぶ間、継続してきたと考えられています。もちろん民族・宗教による対立、砂漠化などにより多くの部族は消えていったことでしょう。
しかし、現在でもイラン〜アフガニスタンでは大昔とほぼ変わらない生活をしている人々がいます。
そこには内と外、自然と人工、などの対立するモノを在るがままに受け入れてきたアジア的なセンスと、厳しい自然や部族同士の争いなどをくぐりぬけてきた、逞しいスピリットを感じとることができます。 |
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今回は、そんな遊牧民達にとって最も楽しみな、食事を彩るソフレと塩袋を紹介します。
砂漠とオアシスそして大草原に暮らす遊牧民の織った、鮮やかな色彩と模様の世界です。
土を見る事の少なくなった、都会に暮らす人々が風を感じられるような毛織物です。 |
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1. ナン用ソフレと食卓用ソフレ |
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大胆でありながら繊細、機能的でありながら装飾的。遊牧民のセンス(知恵)とスピリット(誇り)が経(縦糸)・緯(横糸)に織り込まれた毛織物です。 |
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・ナンソフレ
遊牧民の主食である小麦を原料とするナンを包むためのナンソフレは、布の原点といえる「包む」という、風呂敷に通ずるモノを大切に扱う「丁寧」という心とが感じられます。乾いた気候のなかでは、保存と保湿が重要となります。
焼きたてのナンが何時でも美味しく食べられるように、心をこめて織り上げられた毛織物です。 |
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・ダイニング(食卓用)ソフレ
遊牧民のテントとの中には色とりどりの絨毯やキリムが敷きつめられています。この敷物を汚さないためには、ダイニングソフレが欠かせません。日本のお膳や茶舞台のように、機能的でおもてなしの意味も含まれたソフレは染めていない貴重なラクダの毛を使ったものが多く、文様には、上に乗せられる食べ物が体にとって善きモノとなるような祈りが込められています。 |
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<ソフレの持つ機能と意味> |
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ナンソフレとダイニングソフレに共通して表される周りを取り囲むギザギザの鋸の歯のような文様には、世界中に共通して見られる魔よけ的な意味がこめられているようです。
尖歯文様として知られるとがった三角形の連続柄は、病気等の原因となるばい菌を取り除く意味があるようです。モノを包んでおくこと自体に、モノを大切にするという意味が含まれそれは風呂敷、袱紗など世界に共通する感性です。機能面においても、ラクダ毛や黒羊などの脂質を含んだ毛が保温や保湿効果を高め、食事をさらに美味しくすることでしょう。
生活の知恵と思いやりが織り込まれた、モノと心を繋ぐ布が遊牧民のソフレです。 |
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<ソフレを作る部族と主な産地> |
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A) アフシャール族(イラン南部)
トルコ語系最大の部族で、イランのケルマン州周辺をテリトリーにしてきた遊牧民です。アフシャールソフレの特徴は大胆な幾何学文様のつづれ織りと繊細な小紋のような紋織りのコントラストにあり、それは現代アートのような面白さです。イラン〜アフガニスタンの遊牧民よって織られるソフレはアフガニスタンでは「ダスタルハーン」と呼ばれ、またイランでは炬燵(コタツ)を意味する「ルコルシィ飾り」と呼ばれて、コタツに使われることもあります。 |
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B) カモ地方のソフレ(イラン中部)
古都カシャーン近郊の風情あるイランらしい小さな村がカモです。自由な色彩と文様は他には無い独特の雰囲気があり、多くのコレクターを魅了していています。ここ数年は、欧米の愛好家にとってコレクションの対象となりほとんど市場に出ることなく、コレクターの手に収まっているようです。イラン人の部族絨毯 研究家パルビズ・タナボリ氏によると、オリジナルの古いものは600枚程しか無いようで、近年は益々貴重品となっています。 |
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C) バルーチ族(イラン東北〜アフガニスタ南部〜パキスタン西部)
独特の色彩の毛織物(絨毯・キリム)を織る事で知られているバルーチ族も美しいソフレを織ります。元々はシリア周辺のアラブ系の部族集団ですが、近隣のクルド族とも共通した言語や習慣を持つ遊牧系の大集団です。イラン北部のホラサーン周辺のバルーチ族は大変に緻密な紋織りや綴れおりのソフレを織る事でも知られています。 |
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D) クルド族(イラン北東部ホラサーン地方)
イラン東北部トルクメニスタンとの国境周辺のクルド族は、豊富なラクダの毛を使用した長細いダイニングソフレを織る事で知られています。集積地の町グーチャンという地名が由来してグーチャンクルドなどと呼ばれることもありますが、元々はイラク〜トルコ〜クルディスタンに住む大クルド族から別れた人達です。上下にカラフルな紋織りや縫い取り織りを交えたソフレは、大胆さと緻密さを併せ持つ、バランスの良い毛織物です。 |
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E) そのほかの部族
アフガニスタンに多いアイマク族、タイマニ族なども細長い食卓布を織りますが、ラクダの少ない山岳地帯では黒い山羊の毛をベースに「ダスタルハーン」と呼ばれる毛織物が織られています。 |
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2. 遊牧民に欠かせない塩入れ袋 |
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用の美を越えた装飾性と機能美をあわせ持つ塩入れ袋は遊牧民には欠かせない生活の道具です。家畜である羊・馬山羊・ラクダなどの草食動物に舐められないように、取り出し口がくびれた、壺の様な、造形が特色です。大切な塩を護るためのお守り的意味と、部族の特色が織り込まれた装飾性は、遊牧民のセンスとスピリットに溢れています。 |
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<塩入れ袋を作る主な部族> |
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シャーセバン族(イラン北西部)
サバラン山やモーガン山の高地を遊牧する、トルコ語を話す遊牧民で、スマック織りと言う独特な技法で素晴らしい色彩と文様を織り上げる部族です。 |
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クルド族(イラン〜イラク〜トルコ)
クルディスタン地方に住む大民族集団。最近は定住する人々がほとんどですが、東側(ホラサーン地方)のクルド族は現在でも遊牧を続けている。 |
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バクチアリ族/ロル族(イラン西部)
ザクロス山脈周辺をテリトリーとするイラン語系部族。4000mを越える雪山のザクロス山脈を越えて移動する勇猛果敢なイラン語系遊牧民を代表する部族集団です。 |
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ブーラフィー族(イラン東南〜アフガニスタン南部〜パキスタン西部)
バルーチ族とほぼ同じ地域を移動する遊牧系移動民族、インドの先住民族のドラビタ語系の言葉を話すといわれています。 |
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その他、アフシャール・バルーチ族等など・・・。 |
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