1993年に『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』を製作したティム・バートン監督。(注:『ナイトメアー』の監督はヘンリー・セリックで、バートンは原案・製作のみを担当。)彼が偏愛する異形キャラクターに通じるダークなパペットたちが繰り広げるコミカル&シニカルな物語は、ストップモーション・アニメ界に旋風を巻き起こしました。それと同時に、彼自身もその世界に魅了されてしまったのです。今回、彼自身が『コープス
ブライド』の監督に挑んだのも、「ストップモーション・アニメの“感触”のよさを気に入っている」からなのです。「キャラクターに実際に触れ、動かしていく。彼らの世界が実在するのを目のあたりにすることは、とにかく素晴らしい。実写映画を作るのと同じなんだ」とバートンは強調します。
『ナイトメアー』製作でストップモーション・アニメのスタイルを非常に気に入った彼は、直後から同じ手法で作れる題材を探していました。そんな時、ある友人から聞かされた古い民話は、暗いユーモアと奇妙なキャラクターからなるバートン風味満載のストーリーだったのです。「そのストーリーこそストップモーション・アニメで描くのにピッタリだと感じた。キャスティングみたいなものだよね。役者とキャラクターを合せるように、題材と手法のマッチメイクも必要なんだ」。バートンはまず、キャラクター・スケッチを起こし、傷心のコープス
ブライドと彼女と不本意ながらも結婚してしまう男の物語を軸に、彼の頭の中に生きていたキャラクターたちが次々と形になっていきました。そのスケッチにキャラクター・デザイナーのカルロス・グランゲルが肉付けして、『ナイトメアー』よりも進化したパペットが製作され、セットがデザインされました。12時間必死に作業しても撮影できるのはせいぜい1、2秒の映像、という気の遠くなるようなコマ撮りこそストップモーション・アニメの持ち味。バートンは「コンピューターやCGでは作り出せない味わいがある」と評価します。
そして、その映像に生命を吹き込むのは、盟友ジョニー・デップやヘレナ・ボナム=カーターら実力派の役者たち。主人公ビクターの声を担当したデップとは、『チャーリーとチョコレート工場』に続き5本目のコラボレーションとなります。すでに証明されている通り、【バートン×デップ】のコラボレーションはまさに究極。もはや「ほぼ無意識に意思の疎通ができる」とバートンが言うほど、信頼し心酔し合う2人が生み出す刺激的な化学反応が、本作『コープス
ブライド』をロマンティックなファンタジーへと昇華させたのです。
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