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旅や展覧会の記念や思い出に、または絵柄が気に入って、とつい買ってしまうのが絵葉書ですが、その絵葉書が誕生した19世紀末〜20世紀初頭、絵葉書は現在とは異なる役割をもっていました。絵葉書は、未知の土地や人々を知る、あるいは事件や事故などの出来事を視覚的に伝えることのできる唯一の情報メディアであったのです。そして今、絵葉書はその時代の風景や風俗を見せくれる貴重な資料となって、再び私たちの前に蘇り楽しませてくれます。 |
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絵葉書は1875年ドイツで発行されたのが最初と言われていますが、日本では今から約100年ほど前、明治33年(1900年)に初の絵葉書が発行されました。裏面に美しい絵や写真を配した絵葉書はたちまち話題になりましたが、認知度を高め、広まるきっかけとなったのが、その直後に開戦した日露戦争です。日本軍が勝利するたびに次々と記念絵葉書が発行され、遠い戦地の様子を知るニュース・メディアとして、勝利を共有するツールとして、人々が競って買い求めたので大きなブームを巻き起こしました。日露戦争が集結するとブームも鎮静化しましたが、絵や写真で情報を伝えるという絵葉書の役割がすっかり定着しました。
むかしの絵葉書は、その時代の風景や風俗を私達に伝える貴重な証言者とも言えます。名所旧跡や景勝地や人々の暮らしの変遷を垣間見ることができます。外国人の目に映った日本の姿も浮かび上がってきます。また外国人向けに制作された女性ポートレイト絵葉書からは、当時の人々の美意識やファッションを知ることもできます。
絵葉書が日常的に広く使われるようになると、人々の購買欲を刺激するような趣向を凝らした目新しいものが作られるようになり、挿絵画家によるイラスト、写真とイラストのコラージュ、細工もの等が登場しました。その他日本画巨匠たちによる浮世絵をはじめとする木版や石版による豪華なもの、人気作家による諷刺漫画やイラスト、またヌーヴォーやデコ・スタイルを汲んだデザインの広告絵葉書など、今となっては美術品といえるようなものも少なくありません。 |
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この100年余りの間に世界中で発行された絵葉書はテーマ、ジャンル、技法などは実に多種多様で、そして今も無限に新しいものが増え続けています。何をどう集めたらよいのかわからないと迷う人もいるかもしれませんが、まずは好きなテーマを決めて1枚買ってみませんか。それから案外古い絵葉書が家に残っていることもあります。まず家の中を探してみるというのも手かもしれません。骨董・古本市や古書店などこまめに覗いていると想像もしなかった出会いのチャンスもあるかもしれません。古いものの中にはかなり値がはるものもありますが、それでもまだ手の届く範囲といえます。また本展で協力いただいた日本絵葉書会のようなコレクターの会もありますので、先輩たちのコレクションを参考にしてもよいでしょう。
誰でもどこでもいつでも始められる絵葉書コレクションのススメを提案します。 |
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