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STRANGE MESSENGER & CROSS SECTION : THE WORK OF PATTI SMITH

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推薦文

PATTI SMITH, AS ARTIST, AS MUSICIAN.

ロックの女王パティ・スミスが1997年の初来日以来、7月に4度目の来日公演を果す。
1975年のレコード・デヴュー以来、実に22年ぶりとなった97年の初来日時には、その間彼女が出産、育児のために約8年もの長い休養期間を取っていたためか、古くからの彼女のファンはともかく、新しい世代のロック・ファンにとっては、パティ・スミスは既に過去の伝説の中に封印された存在といって良かった。正直観客動員の点でも、この初来日時は今一つだったという思いが残った。しかし2001年にロックの祭典、フジ・ロック・フェスティヴァルに出演した彼女は、広大な自然の中、圧倒的なまでにエモーショナルなステージを繰り広げ、それまで名前だけでしか彼女を知らなかった若い世代の聴衆を虜にし、そのフェスのベスト・ライヴ・アクトとの評判を勝ち取ったのである。そして続く翌2002年のフジ・ロック・フェスにも登場し、前年を更に越える感動的なパフォーマンスを見せつけたのである。

さて多くの人々にとってパティ・スミスとは女性ロック・シンガーの女王として認知されるだろうが、実は彼女はロック以外の多岐に渡るアーティスト活動も並行して行ってきたいわばジェネラル・アーティストと呼ばれるべき存在でもある。ハイスクール時代にモジリアニの絵によって絵画創作に目覚た彼女は、フィラデルフィア・アート・ミュージアムの奨学金でアート・コースを専攻、またニューヨークのアート・スクールで知合った写真家のロバート・メイプルソープと刺激しあいながら、絵画やブランクーシに影響された彫刻などの創作活動に早くから情熱を注いでいた。また絵画と並行してランボーの影響により詩作活動にも情熱的であった彼女は、1972年にニューヨークのテレグラフ・ブックスから『Seventh Heaven』という初の詩集を出版し、最初に詩人として世に出たのだった。73年にゴーサム・ブックストアから『Witt』という詩集を出版したときには、そのゴーサム書店の2階で、初の小規模な絵画の個展を開催した。 Self-Portrait, 1969
Self-Portrait, 1969  (C)Patti Smith/The Andy Warhol Museum

その個展は評判を呼び、78年には57丁目の格式高いロバート・ミラー・ギャラリーでメイプル・ソープの写真とパティのドロ−イングによる共同展「Film And Stills」が開催され、彼女の絵は専門家からも高く評価されたのである。

The Kingdom of God is Within You
The Kingdom of God is Within You, 2002  (C)Patti Smith/The Andy Warhol Museum
しかし詩人や劇作家(サム・シェパードとの共同執筆作もある)としての活動の方が知られていくうちに、1974年に発表した一枚の自主制作のシングル盤がきっかけとなり、大手アリスタ・レコードと契約した彼女は、「ロックン・ロールの女ランボー」、「パンク・ロックの女王」とセンセーショナルに受け止められ、その後女性ロック・シンガーのカリスマとして広く世界的に知られていくこととなったのだ。

今回の来日が大きな意味を持つのは、来日公演と同時にそのパティ・スミスのドローイングや写真等からなる大規模な作品展「STRANGE MESSENGER & CROSS SECTION : THE WORK OF PATTI SMITH」が開催されることだ。これは先にアンディ・ウォーホル・ミュージアムで行われた展覧会をそのまま日本でも開催するもので、彼女が70年代から描いていたドローイングから、あの9・11のテロに触発されて描いた最近作まで約100点以上の作品が展示され、彼女の30年間に渡る音楽以外のアーティストとしての活動が一望できる貴重なイヴェントとなるものだ。おそらくこれほどの総括的な規模での彼女の個展というのは、今までに例のないものである。

ロック・シンガー、詩人、ペインター、写真家、作家…と彼女の創作活動は多岐に渡るが、知っておいて欲しいのは、それらが彼女自身の人生の一部として存在し、彼女の心の中から涌き出てくる止むに止まれぬ思いや感情から発信されてきたという事実だ。生前のパティの良き理解者ロバート・メイプルソープがパティについて語った「今までに会ったどんな人間とも違っていた。もし彼女がアートを見つけていなければ、精神障害者になっていただろう」という言葉の通り、パティはいつも自らが体験した愛する人との別離や、出産という永遠のジャーニーや、世界の戦争や不条理に対する怒りや悲しみ等を、赤裸々に自らの表現活動で提示してきた。故アレン・ギンズバークやウィリアム・バロウズらビート・ジェネレーションの作家たちと交流し、彼らビートの反物質主義の精神を標榜し、自らを音楽業界の「ロックン・ロール・ニガー」と呼び、歌詞の検閲等の言葉狩りに反対してきた。マザー・テレサやダライ・ラマに対する敬愛の念を語り、昨年のフジ・ロックでは過去の広島の悲劇に対して自らがアメリカ人の一人として、日本の聴衆に対して土下座までして謝罪してみせた。
9・11のテロ後も各地のコンサートで反戦のメッセージを訴え続けている。そんな彼女のアート、表現活動とは、決して表現のための表現やデイレッタントの産物などでは決してない。彼女の歌、詩、言葉、絵、写真等々からは、彼女の心が、強いエモーションが、喜びが、怒りが、悲しみが、溢れんばかりに伝わってくる。

例えば今回展示される「South Tower」と題された作品には誰もが強い衝撃を受けることだろう。7月に遂に開催されるパティ・スミスの作品展とコンサートを通して、我々は自らの怠惰な日常に喝を入れる彼女の溢れんばかりのスピリットに打ち震えることだろう。

鳥井賀句(音楽評論家/プロデューサー)


「貴方のことが人生に関係しています。今日も貴方の在ることが本当に嬉しい」 UA


この「STRANGE MESSENGER」展は、昨年、アンディ・ウォーホル・ミュージアムで行われたパティ・スミスによる初の回顧展です。
パティは、70年代にミュージシャン、そして詩人としての活動を始めましたが、もともとはアーティストを志してアートを学んだ経歴を持っています。彼女の経歴のなかでも良く知られていることに、写真家のロバート・メイプルソープとの親密な交流がありますが、これも彼女がアートへの結びつきがあったからに他ありません。今回の展示は、そんな彼女が長年描き貯めたドローイングを中心に、これまで音楽と詩によっての表現者で知られた彼女の新たな側面を見ることのできる貴重な展覧会になります。展示作品は、ランボーやメイプルソープを描いた初期の人物画、十字架をモチーフにした連作、そして圧巻なのは9・11のテロ事件をテーマにした最新作といった内容で、彼女の30年以上の軌跡を一望することができるような充実した内容です。
また、これまでに出版された詩集のオリジナル版や、今回のパルコ・ミュージアムにおいて世界でも初の展示となるパティの写真作品を「CROSS SECTION」と題して展示することになり、その写真集もヒステリック・グラマーから出版されます。
もちろん、オープニングにはパティも来日、サイン会や会場での特別なパフォーマンスなどを行ってくれることになっています。
パティのアナザーサイドに触れる絶好のチャンスをお見逃しなく!

河内タカ(本展コーディネーター)


自分にとって40年の人生のなかで、最も興味深いエキスビジョンである。思えば中学生の頃、彼女の存在を知って以来、彼女の活動を通して僕は色々な事を学びました。70年代のNEW YORKパンクカルチャーは勿論の事、文学面においてはビートニク・カルチャーの存在、またロバート・メイプルソープなど写真やアートに対しても、彼女から導き学んだ事は、数知れません。もしあなたが彼女のファンでしたら、今回の彼女の作品展で、詩(うた)以外の彼女の心の叫びが聞こえるでしょう。もしあなたが、彼女の音楽を知らなくても、写真や文学に興味があるなら、是非、見ていただきたい。でもし、少しでも、興味をもったなら、是非、彼女の詩も聞いてみてください。きっとあなたも彼女からのパワーを感じるはずです。

北村信彦HYSTERIC GLAMOUR/デザイナー)


女性として、クリエーターとして、そして何よりも私の師として…。
彼女が残してくれた作品は、戦争、平和、思想、愛、それらが織り成す世界と彼女とか激しくこすり合った摩擦熱の痕跡のように記録されている。
彼女は、今も存在し、激しく昇華された作品は私たちを熱く焦がすほど伝わってくる。

富永よしえ(写真家)


about Andy Warhol Museum

本展覧会を企画・オーガナイズしてアメリカで初めて公開したのが、アンディ・ウォーホル・ミュージアムである。1994年創設、ピッツバーグのダウンタウンにあるウォーホル美術館は、一人のアーティストのためのミュージアムとしては世界最大規模を誇る。20世紀を代表するアーティストであるアンディ・ウォーホル(1928−1987)の絵画・シルクスクリーン・写真などの代表作や映像作品に加え、彼の私物や関連品などの収蔵、管理、展示を行う。
また、ウォーホル作品の常設展の他、ウォーホルゆかりのアーティストによる展示なども継続的に行い、アメリカでの美術館としての評価は非常に高い。ニューヨークのディア・アート・センターやホイットニー美術館の増改築を手掛けたリチャード・グルックマンの建築で、最近ではグッゲンハイム・ベルリン、六本木の森アートセンターも彼の建築である。

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